考えるヒント 母の日が近づくと

母の日が近づくと、私は軽い混乱とめまいを感じる。

私の母はもう20年ほど前に亡くなっているが、私の息子たちの家族が、ヨメサンに母の日のお祝いの花束や花の鉢を送ってくる。ヨメサンもうれしそうだ。父の日は、ほとんど無視だが、過去にお祝いをもらったこともある。

 ヨメサンは、実家のお母さんに、自分で贈り物を用意して送っている。そんなこんなで、私の周りは母の日のムードが飛び交う。

 ヨメサンは、時に母親みたいに、ごちゃごちゃうるさく言うから、(何か、ヨメサンにこの際、贈るかな)と感じ始めながら、いつもの近所ルートを、自転車を押しながら、歩きながら、110冊ラジオ英会話の教科書丸暗記の挑戦を続けていた。

 ふっと見ると、歩道の車道に近い端に、巨大な白い花の鉢があった。みたこともないほどの大きさは横幅20センチもある見事な牡丹の花だった。鉢木の幹に「牡丹」ってタグが付いていた。私は、どうも、ボタンもシャクヤクも区別が付かない。どっちが、いつ咲くのかも分からない。自粛で店を閉めている小さな古い花屋が、この見事に咲いた白いボタンを歩道に出していた。

 細い幹に、X千円と値段が書いてあった。(このでかい白い牡丹なら、喜ぶかな。帰り道で買うか)と、通り過ぎて、帰り道は道の反対歩道を通ってしまい、買い忘れ、家に帰ってまた、母の日ムードに襲われて思い出した。

 次の日、白い牡丹を買おうと店に行ったら、白い花は、もう無い。無いと余計に悔しい。自粛の店の扉を開けて、オジサンがでてきて、やはり売り切れたという。

「他にはありませんか」

「咲いているのは、ありませんね。来年咲くのはありますよ」と、オジサンは牡丹の2鉢を裏から運んできた。ただし、今年は咲いて、花は散ってしまった後だった。葉っぱだけがやや疲れて茂っていた。

「これなら一つX百円です」

「これ、来年になったら、咲くのですか」

「もちろん咲きますよ。育て方は、その札に書いてあります」

 その時、一瞬思った。先日の結婚記念日にヨメサンにプレゼントした白い小さなハムスター一匹、渡した時は激怒しながら、一晩で衝撃的な溺愛に変ったあの、特殊母性愛効果を利用して、これから来年の母の日辺りに咲く巨大な牡丹を、ヨメサンご自分でゆっくりと“楽しみ”ながら、ベランダで育てるという、新聞の長編小説的贈り物を考えた。

 そういえば、ヨメサンはベランダのハイビスカスの花が「咲いた、咲いた、見てやって」と、擬人化してうるさいから、きっとこれもその流れに乗って、面倒をみるだろう。来年の母の日はすぐにやってくる。大きな花が来年の母の日あたりに咲いたら、私の心を思いしる(違った、思い出す)だろう。と考えて、花の終わった2鉢の牡丹を自転車に載せて、強風の中を、自宅まで輸送した。

「へえ、何これ」

「牡丹だよ」

「咲いてないじゃない」

「来年の母の日の予約です」

「あなたねえ、いくら何でも、ボウズになった、咲いた後の幹だけの鉢を、贈り物にするとは、非常識よ。それじゃあ、ダメよ。呆れた。すぐに返してきなさい」

「……」ここはうなだれて、我慢で、逃げ切る以外にない。(早く例の母性愛よ出てこい)

「なんとねえ、咲き終わった鉢、来年咲く花の鉢を贈り物にするとはねえ。どういう頭をしてるの?ひどいわよ。これいくらしたのよ。タダでしょう?」

「違うよ。昨日、白い大きな、見事な牡丹の花が咲いていたんだ。X千円だった。だけど、売れちゃって、これになった。X百円だった」

「そりゃ、店の人はこれから1年世話をしなくて良いから…」

 この調子で半時間の罵詈雑言。←だいぶ私も慣れてるが、これ予想より反応がきつかった。

その後、ヨメサンが洗面所へ行った隙に、何食わぬ顔をして、ヨメサンの部屋のベランダに運び込み、ハイビスカスの鉢の横にすました顔をして、並べて置いた。(これから面倒みてもらえよ。口は悪いが、心は…)

 その日から、ヨメサンは、子供たち、実家の母親、そして多数の友人たちに、「うちの主人の贈り物ってね…」と、ラインと電話で言いまくった。おかげで私の株価は再び乱高下。そのさまざまな反応を、私に言う。次の日も食事の時に、その話題が出た。一週間後は、笑っていた。来年予定の牡丹の鉢も一応水はもらっているようだった。そんな意地悪をする人ではない。多少のボタンのつけ間違いはあるが、来年の母の日には解消する予定だ。咲いたら写真を掲載しよう。

考えるヒント

(1)変わった贈り物を贈ることを考えよう。相手の家に入らないサイズ、入れられない贈り物は危険だ。良く知って、叩かれても蹴り飛ばされても壊れない人間関係のある相手でないと、ハムスターや咲いて散ったあとの鉢植えは贈らないように。

(2)今までもらった贈り物で面白いもの、変わったもの、驚いたものはあるか?

0 like

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です