考えるヒント 制覇 1 世界制覇主義の競争花盛り

日本がのんびり太平をむさぼり、毎年の花見を楽しみにしている間に、世界の主要国は様々な形で世界制覇を進めてきた。これを「世界制覇主義」と名付けた。世界の主要各国は、何かで世界制覇を果たそうとすると、どこからか競争相手が出てくる。これが世界制覇の競争原理だ。

(1)資本制覇主義

 これは、もう百年以上の間のもっとも古典的、伝統的な制覇主義で、最初に巨額の資本を持っている者が強いに決まっている。以前はもっと大きな力を持っていたが、ここ数十年の間に、中国が工場生産と貿易で稼いだ資金も巨大になっている。それが欧米の資本と混ざり合い、競い合い、資本の制覇主義を動かしている。米国の資本の制覇スケールは、段違いに大きい。

 ソ連が崩壊するまえは、共産主義、社会主義などの主義による世界制覇があったが、これらの国々の国民の自由へのあこがれと、働くモチベーションを失ったことで、崩壊した。現在は修正された資本主義的社会主義という、儲けることと、治めることを別にした国だけが繁栄している。

(2)石油制覇主義

 一番露骨な世界制覇は、1960年に設立された石油輸出国機構(OPEC)だ。これは資源を持つ国が世界中の富を集めまわるという仕組みであるが、一時の飛ぶ鳥を落として焼き鳥にする勢いは収まりつつある。予算が膨れ上がり、金遣いが荒くなった分、ぜいたくになった分、今は余計に苦しく感じるOPECのメンバーがたくさんでている。ベネズエラ、ロシア、イラン、ナイジェリアなど、本当にこれが主要産油国なのかと思うほどの悲惨な状態だ。

 現状は電気自動車、ハイブリッド、さらに自動車への価値観の変化、公共交通機関の整備などから、需要が減っていて、がめつく値段を付けようとしても、値段が上がらない。ロシアもイランも減産高値で売ることで国家財政を立て直すことしか念頭にない。中国のように世界の工場になるという勇ましい意欲はどこにも見られない。石油・ガスと武器以外の別の商品を売って、稼ぐことをどうして考えないのだろうか。

 OPECに最大のダメージを与えたのが、米国のシェールガスの対抗である。シェールガスによって今までの主要な産油国の世界制覇の夢は崩れてしまった。ところが石油の価格が崩れてしまうと、皮肉なことに、その火の粉はシェールガスにもかかってきている。資源による世界制覇はなんと難しいものか。

 石油輸出国機構(OPEC)があんなに世界制覇で儲けたので、他の様々な資源も同じように独占で、世界制覇を果たせないかと単純に思ってしまう。

 2010年の中国によるレアアースの禁輸も、レアアースによる世界制覇を果たそうとして、無様に失敗をした例となった。無数の技術開発でのレアアース不使用の商品の開発や、他のレアアース鉱山開発、深海のレアアース開発まで一杯でてきて、中国は自国のレアアース鉱山が赤字になり、2015年に白旗を上げた。

(3)OSソフトによる世界制覇

 これが一番成功し、まとまった資金を世界中から集めることができ、パソコンメーカーを従属させた世界制覇ではないだろうか?

 1975年に設立されたマイクロソフト社、1976年に設立されたアップル社、これらの2社で、パソコン用のOSでは、世界の99.9%のシェアを持っているのであるから、世界制覇そのものだ。見事と言うほかない。日本のメーカーでは到底(今も、出てこない)発想、戦略とスケールだ。

 これらの2社で、日本のメーカー群のまじめに作っていた良い商品への信仰を叩きのめしたのは見事だ。途中でトロンのような小さなOSの挑戦があったが、日本の政界ロビーを動かして封殺してしまった。これ以降、日本の家電電子メーカーは冴えなくなり、徐々に落ち目になっていく。

 これに対して、中国はさすが、第3のOSを作ろうとしている。今、必死になって作っているのだろう。世界制覇には競争相手がやがては出てくるという。公式通りだ。

 さらに決定的な追い打ちをかけたのが、アップルだった。まず最初はアップルのiPodだった。日本のソニーは著作権のことで遠慮ばかりして、我々ユーザーのことを考えなかったが、アップルは人々が楽しみ、そして自分たちも十二分に儲けるという世界制覇を果たした。iPadに進み、さらに調子を付けて、iPhoneへと進展した。この世界制覇は、マイクロソフトの世界制覇に水を掛けた。ただ、そのiPod、iPad、iPhoneももはや工場としては米国国内では不可能だった。

(4)商売世界制覇

 現在も続いている世界制覇で、世界中のお店、大規模店、百貨店、スーパーをぶっ潰してきたのが、アマゾンだ。

アマゾンが1994年に設立された時、誰もこれだけ超規模に拡大し、国際的に成長するとは思ってもいなかった。

 25年間で、世界一のオンラインでの商売会社に成長したのだから、これはもう今、血気盛んな世界制覇の最中の会社である。現在、すでに欧米各国では、巨大すぎるアマゾンへの規制を考え始めているが、アマゾンに対抗できるのは、アマゾンと同じようにオンラインでビジネスをしていく競合相手が出てくる必要がある。

 そこで、中国のアリババが育ってきたのは、さすが世界制覇に夢中の中国の企業だ。アリババは開発途上国に強いという。また実際に現在の世界の工場が中国であるから、アリババの方が有利なこともある。ここにも世界制覇には競争が発生する。日本ではこのアマゾンXアリババの闘いはまだ本格化していない。

(4)製造の世界制覇

 現在の中国製造工場の百貨店である。作っていないものはない。今にクローン人間だって作りかねない。世界中で、中国製品が売られている。そして徐々に品質が向上している。

 中国で作る欧米日の会社も多い。そうして欧米日からはありとあらゆる工場が消えた。アマゾンで商店が消え、中国で工場が消えていく。中国の狙いは製造を独占すれば、コロナのマスクの騒ぎのように、中国でしか製造していなければ、値段を10倍、100倍にしても売れる。売れた利益は、中国政府の軍事力と地方へのインフラ、アフリカ諸国への貸付となる。中国は何でも被んでも、世界制覇だ。

(5)国連関連の国際機関世界制覇

国連の様々な国際機関15で、中国がトップになっているのが4機関ある。その他、あの国際保健機関WHOのテドロス(エチオピア)など、中国のシンパを含めれば、中国は国連の国際機関をかなり抑えていると言える。中国の賢さを思い知らされる。

 しかし、今回のコロナでの中国の、WHOテドロスの指導は大きな反感を起こしてしまった。中国自身のイメージダウンは計り知れないほど大きい。そして欧米、日本を含めて国際機関のトップ人事、幹部の人事にはかなり神経質になってきている。この分野での世界制覇はこれから競争が激しくなる。

(6)航空機による世界交通制覇

 私が商社に入社した1970年のころには、世界の空を飛んでいるのは、ボーイングとロッキードとマクドネル・ダグラスのすべて米国の機種しかなかった。

まさに世界制覇だ。

 すごいと思うのは、エアバス社の出現と、ロッキード、ダグラスの退場である。現在の航空機はボーイングとエアバスの二社の世界制覇となっている。

 この部分では、ロシアも中国も世界制覇に参加していない。色々参加しようとしているが、ツポレフは空飛ぶ棺桶だったし、中国製の旅客機は旧ソ連のコピーだから、怖すぎて乗れない。乗らない。

(7)食料による世界制覇

小麦、大豆、コーンの供給は、現在は米国とオーストラリアなど主要安定穀物輸出国の世界制覇の状態である。中国は工業と工場、そして商業による世界制覇に偏り過ぎて、この分野では数十年遅れてしまっている。中国の世界制覇の失敗部分だ。中国が米国には、「買ってもよい」と言うが、本音は「売ってください」である。日本も強いことは言えない。

(8)軍事力による兵器世界制覇

 かっては、アメリカとソ連が世界制覇を狙い、武器を世界中に売りさばいていた。それにフランスが小規模でビジネスをしていたが、米ソの規模ではなかった。ソ連が崩壊した後、アメリカは、好きなところに好きなように武器を売れるようになったが、自分の売った武器で、米兵が撃たれるようなことや、中国がステルス戦闘機開発、超高速弾道ミサイル、ジャンプ式発進航空母艦など、軍事力の拡大と武器輸出として急速に台頭してきていることから、今後の兵器世界制覇は、米中の制覇競争になるだろう。

 ただ、テロや過激派、原理派などの出現で、通常の従来の兵器が意味をなさないことも多くなっている。

さあ、このような世界制覇ばっかりを狙うバッファローさんや白熊さんや、パンダさんが跋扈している世界で、日本は何をすることができるだろうか?何を制覇しようとしているのだろうか。どんな制覇のレースに参加することができるのだろうか?「平和な制覇」があるのだろうか?

この続きは、次回に。よろしければ、“いいね”を押してね。また他の種類の“世界制覇”の方法があれば教えてください。

考えるヒント

(1)日本が世界を制覇するとしたらどのような分野か?

(2)戦後、現在に至るまで、日本が世界を制覇した商品は何か?

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