考えるヒント コロナと海外駐在

現在のコロナ・パンデミック下での海外駐在のあり方を考えてみたい。例によって、「コロナ下」と「ポストコロナ」を区分けしなければならない。

  「コロナ下」とは、ワクチンができるまでの期間

  「ポストコロナ」は、ワクチンが一般に投与されるようになった後の期間

1 海外では家族が駐在員の健康を守る

私は1973年、商社で入社3年目にアフリカ・ナイジェリアの当時首都のラゴス(今は内陸のアブジャ)に家族帯同で赴任した。ラゴスは、各商社が駐在を置いてきたが、以前は単身赴任の国だった。ところが、単身赴任していると、仕事と私事の区分けがつかず、バランスの取れた食事も食べずに、酒などが加わると、体を弱らした。そこの悪名高いマラリアが蔓延している国で、抵抗力の落ちている駐在員は、頻繁にマラリアに罹患した。

 そこで会社は、マラリアで倒れた所長の交代の新所長から、逆の発想をして、家族帯同を勧めることになった。私もその一環でヨメサンと生まれて3か月の長男を連れてラゴスに赴任した。

 もちろん絶対に窓やベランダドアを開けっぱなしにして寝ることはなかった。当時は蚊取り線香と液体の殺虫剤手押しスプレーしかなかったが、家じゅうに蚊取り線香を配置していた。だから生後3か月の長男は、3年半のナイジェリア滞在中、一度もマラリアには掛からなかった。

 それだけではない。所長の家族も、所長代理の家族も、私の家族も、全員の健康は、奥さんと家族が握っていたのだ。家で朝食、昼も帰宅して昼食、そして夕食としっかりと栄養バランスを採り、食事をして、睡眠も家族に合わせることで、体が弱ることもなかった。そのために、歴代マラリアに発病していた単身赴任時代の所長たちと違って、家族帯同の私たちの所長は、健康そのものだった。

 私は、ナイジェリアのラゴス3年半駐在の後、サウジアラビアの砂漠の王都リヤドに家族一緒に赴任したが、単身赴任だったら2年半も持たなかったかもしれないが、家族一緒で8年半も駐在できた。後半は、仕事もしやすく、お客との人脈もでき、充実した駐在を過ごせた。その時も、家族(子供は息子たち3人になっていたが)一緒で過ごすことが、海外駐在にはとても大切だと考えている。

 だからコロナ以前に、私は世界中どこの国に駐在される方には、家族一緒に行くことをお薦めしてきた。駐在員の健康と精神を安定させるのは、家族が一番ですと誰にでも言い切ってきた。

 当時のナイジェリアも結構、かなり荒っぽいところであったが、まだ軍事政権が国内を抑えていたので、けっこう社会は安全だった。コソ泥、スリは多かったが、(現在のナイジェリアのように)押し込み強盗や、車を止めて強盗するようなことは、少なかった。

 当時のナイジェリアには、マラリアやコレラはごく普通だったが、これらは煮沸し、マラリアはとにかく「ハマダラカ」に刺されないようにしてしのいだ。映画館で殺虫スプレーを映画の前後、途中と掛けて観ていた。

2 海外では駐在員が家族の安全を守ることが最重要

家族同伴で駐在しているのなら、家族を守ることは駐在員の最重要な仕事だ。

 駐在員の使命はまず家族の安全だ。家族が安全に、幸せに過ごせてこそ、会社で良い仕事ができる。日本と違って、米国では、どこの都市や町にも、絶対に住んではいけない区域、

行ってはいけない地域がある。安いからといって、そんな場所に住むと、家族も本人も命取りになる。

 昼間は家族が狙われ、遅く帰ってくる時には、駐在員が強盗に遭う可能性があるのでは、何をしに、海外へ家族を連れて行ったか分からなくなる。派遣している会社もそのことをよく理解しないといけない。また危険と安全のボーダーというか灰色の地域もある。同じ通りで、反対側は歩いてはいけないというような場所だ。

海外では、安全な場所に住むことが絶対条件。子どもたちの家庭教育も、奥さんの生きがい作りも、仕事の一部だ。

3 家族帯同不可の条件

 当時から、家族を連れていけないところの条件は、

(1)治癒の方法がはっきりとしない感染症がある国

(2)強盗、殺人、誘拐、強姦の普通の国

 この二つの条件に引っかかると、私は家族帯同を断っただろう。あるいは私自身が(精神的に弱いもので)単身赴任ですらも断ったかもしれない。今はこれらにテロや爆弾事件頻発もある。

4 コロナ下の海外駐在

 入国制限が世界中の国々で行われ始めたとき、私は今の海外駐在は、大変な状況になったと思った。大戦中と同じような環境だ。海外での頑張っている日本の駐在員は、日本経済の最前線だ。海外に駐在している日本人家族の心配や恐怖感は十分に分かる。

今のコロナ下は、治癒の方法がはっきりとしていない潜伏期間のある感染症の範疇にはいる。まして、それがパンデミックとなっていて、更にその国の医療体制が急激な感染者の増加に付いていけないで崩壊していたり、もともとまともな医療体制が無い国への家族赴任は考えられない。

 今回のコロナでは、米国の惨状、英仏スペイン・イタリアの医療崩壊を見て、これらの国にコロナ下で、家族を同伴することは、強気でイケイケの私ですら躊躇する。

 更に米国や、欧州各国もコロナが治まるまでは、本当に注意が必要だ。ロシア、インド、ブラジル、メキシコなど、中南米諸国、フィリピン、インドネシア、エジプト、知ったかぶりのスウェーデンなども、感染パニックと医療崩壊であることから、方法を誤ったと言える。やはり家族で駐在することは難しい。

 もちろん海外の中には台湾や、香港などの独自の医療体制を取っている国もあるが、極めて少ない。すでにこれらの国々に家族を同伴している駐在員は、それこそ万全の注意を払って、生活することで家族のだれ一人としてコロナに感染しないようにしなければならない。

 私が、欧米、その他の感染者急激増加国や明らかに医療崩壊中の国々で家族一緒ならば、できれば、しかるべき早い時期に、家族を日本に送り返すだろう。帰国後、一定期間、自宅待機は必要で、会社は、ホテルや社宅を使うことになるだろう。今の日本は、第一次波を終えて、第二次波を越えようとしている。第三次波は、当然数週間から数カ月でやってくる。医療崩壊などの大惨事にならないように準備が必要だろう。

そして、待望のワクチンが完成したら、一斉に家族をご主人のところに戻そう。またまた現地で自宅待機となるかもしれないが、「自宅待機のエキスパート」になっているだろう。家族は駐在員の健康のバロメーターである。

アジアから出て世界に蔓延したコロナなので、アジア以外の国々で、突然、「お前らが、コロナを持ち込んだのだろう」と難癖をつけられることも、石が飛んでくることもあるかもしれない。脅されることがあるかもしれない。

私はSARSの時は、ネパールで、社有車に日本の小さな国旗を車内の前後に付けていた。日本の旗はシンプルで最高に分かりやすい。そして胸ポケットにはハンカチ大の日章旗を入れていた。いざという時の説明用だった。使うことはなかった。

5.できればマスクとフェースガード

マスクをする習慣がまったく無かった国々でも、流行後、マスクがそんなに不自然でなくなった国では、外出は絶対にマスクをしてほしい。極端には宅急便やUberの配達の受け取りもドアの外で行う。

私の場合は不織布のサージカルマスクの中に、折りたたんだガーゼを入れている。そのおかげで唇の感触が良いことと、ガーゼの厚みのために、両頬でのマスクのフィット状態が改善されてぴったりとする。さらにガーゼは保湿と保温で、ウイルスの繁殖を防ぐ役割もある。

フェースガードが必要なのは、多分、通勤電車だろう。買い物には、使い捨てのビニール手袋を右手にしている。この使い捨てのビニール手袋は、通勤の電車のつり革や支柱を持つときにも使う。

ネパールに駐在していた時、SARSの流行があった。ネパールは中国に接していたので、本当に怖かった。その時は、上着の両ポケットに、ジップロックに殺菌液を浸したガーゼを入れていて、お客と握手した後は、自分のポケットに手を入れて、ジップロックの殺菌ガーゼで手を殺菌していた。誰にも知られなかった。事務所には踏めば靴底をクレゾール液で殺菌する平たいブリキの殺菌皿を作っていた。

6. お手伝いさんや運転手の扱い

  現地の自宅で、お手伝いさんを雇っている場合は、できれば有給で自宅待機とするのが良い。食事の用意も片付けも家族内で行うことが必要となる。守衛は、その住宅の地域の安全性によるが、守衛が必要とされる地域ならば家の中には入れないで、外の守衛の部屋にて仕事をさせる。お手伝いさんも守衛も、朝の到着時に、手洗い殺菌と、非接触式の体温の記録を毎日取ることである。37度を超えることがあれば、仕事の内容を問わず、帰宅させ、必要とあればPCRの検査を受けてもらう。

 運転手も、会社雇用と個人雇用があるが、できるだけ本人が運転できるならば、運転するようにしたい。日本の会社は、海外駐在の日本人の車の運転を認めていないこともある。その場合も、運転手の給与は払う必要が出てくるだろう。いずれにしても、感染の不確定要因を減らすための努力はする必要がある。

 やっかいなのは、現地雇用の社員の扱いであるが、最悪はやはり、自宅待機として、給料は支払う必要があるだろう。会社の事務所内は邦人のみが仕事をするが、その際も、マスク着用と手を洗い殺菌は出入りごとである。

 このように自宅や事務所において、感染の可能性を最小限にすることが必要となる。大切なことは、このような感染防止をしながら仕事をする場合に、現地雇用の社員を差別しているように取られないようにすることが何より大切である。

7.徹底的なテレワークを

 邦人は自宅で自粛するなら、徹底的にテレワークを行うと良いだろう。営業や工場の運営や監督指導が必要な場合はでかけるとしても、徹底的に自粛体制で駐在業務を務めるのが感染防止になり良い。外での会食や公共機関による通勤は避けること。

8. 日本の動き

(1)  ここ2週間ほど、東京だけでなく、全国で感染者がどんどん増えている。ここ数日毎日1500名ほどの感染者がでてきている。ジョンズ・ホプキンスのランキングでも日本は毎日上がり始めた。政府はまだ医療設備に余裕があり、重篤患者が少ないと無策どころか”Go toキャンペーン”を開始している。それだけではない。検査で陽性となった若者中心が、軽症としてホテルに入って、たった4日で放免となっている。それもPCRで陰性を確認しないで、どこに行っても構わないとなっている。原理は、発病から10日経つと、陽性でも人に感染させないとの統計らしいが、保証されるものではない。

 このような若者中心の拡大は、年長に広がり、重篤患者、そして人工呼吸の不足、ECMO装置の不足につながり、高齢者や喫煙者は斃れていく。日本は一つの大きな節目にきているかもしれない。家族を日本に帰国させたら、感染者が爆発的に急増している可能性も出てきている。

2)2020年8月8日ころ

 このところ、毎日1500人ずつ日本の感染者が急増している。政府は経済活動に重心が移っていて、感染者の急増に対策を取ろうとしていないように感じる。毎日全国で感染者が1500人の増加を見せていることで、ジョンズ・ホプキンス大学の日本のランキングがどんどん上がってきている。

 ということは、数日から数週間のちには、日本国内での医療体制が崩壊する可能性がでてきた。沖縄ではもう感染者の急増に医療ベッドの数が不足が明らかになっている。

 日本は失敗策のスウェーデンや英国の歩んだ道を進みだしているように見える。愚かなアベノマスクに1000億円の無駄遣い。時期を間違えて意地を張って進めているGOTOキャンペーンなど、もう無茶苦茶な方策となっている。この乱調が続けば、このブログで目指している海外から日本に家族を一時帰国させた場合に、医療が崩壊していると、とんでもない扱いを受けることになりかねない。いや、日本に帰国する飛行機便が不明確になっている可能性がある。

(3)ワクチンについて (2020年8月8日)

 2021年2月には、ワクチンは投与できるようになっているかもしれない。日本の人口の3分の1程度の分量であるが、まだ抗体を持たない人が優先になるのではないか。高齢者も優先されると期待している。

(4)世界の感染者が2020年8月11日に2000万人を超えた

南北アメリカ大陸や ベトナムとシンガポールを除いた東南アジア、インド、パキスタン、バングラデシュ、南アフリカ、ロシアなどは、まだ拡大している。これらの諸国は医療崩壊を起こしており、万が一を考えると、現地でPCRと抗体検査をしたうえで、家族の一時帰国は必要ではないだろうか。

(5)日本での感染者状況 2020-08-23

 専門家の一部には、コロナの第二波のピークを越えたという意見が出ている。まだ予測の予測のようなところがあり、今後、第3波が来るかもしれない。北中南米やインド・パキスタンのような明らかな医療崩壊の状態のところからは、日本は(今のところ)はるかに恵まれている。まだ感染していないと最新のPCR検査結果を書類で家族全員が持っているならば、この機会に家族だけでも帰国するのが安全かもしれない。

空港でPCR検査を受けて、ホテルでの所定の待機に入る。

(6)日本での感染者総数と回復者数のグラフ 2020-09-06

 すでに何カ月も、日本での感染者数と回復者数の折れ線グラフを作成し、見ているが、うれしいことに回復者数が感染者数に接近してきている。ということは、感染しても回復する人が増えていることだ。青線は患者数で赤線は回復者数

更に日本での感染者の日ごとの発生者の数が第二の山場を越えたことから、今が一時帰国のチャンスかもしれない。日本ではまだ医療崩壊は起こっていない。冬には三番目の山場がくるのだろうか。その前にワクチンの投与が始まって欲しい。仕事も大事だが、仕事よりも家族の命だ。

参考著書 このホーム頁のBookの棚を参照

     1 海外生活の危機管理 (キンドル)

     2 海外家庭教育(キンドル)

     3 目からうろこの 父親の子育て教育参加(キンドル)

海外でがんばっている日本人家族の無事を祈ります!

考えるヒント

ポストコロナで、ワクチンを打った後、海外駐在で家族を連れていく場合、どんな注意が必要と考えますか?

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