考えるヒント 商社の海外新時代が来るか

アフリカ西海岸のナイジェリアのラゴス事務所駐在を3年半終えて、日本に帰国したくなかったので、サウジアラビアの首都リヤドに転勤した。いずれも家族同伴だった。その時の私の信念は、海外で生活が難しいところであればあるほど、商社の存在価値があるということだった。

 生活が難しいところだからこそ、その地のノウハウを知り尽くすために、少しでも長く滞在しようと思った。少しでも多くの有力な友人を作り、プロジェクトを進めていける。サウジアラビアだったから仕事が充実していた。

 ニューヨークやロンドン、そして3Sと言われたシアトル、シンガポール、シドニーなどは、誰でも、いつでも行ける場所になっていたので、商社マンより長く滞在している日本のメーカーの駐在が多数いる。

日本に住む日本人全体が持っている感覚の一つに、海外生活が厳しく見える「海外勤務バイアス」がある。私は厳しいと言われるところで、エキスパートとなることを選んだ。だからサウジアラビアに8年半は、仕事が楽しかった。そして後半はますます楽しくなっていった。私が日本の商社、メーカー、政府関係者のだれよりも長く滞在していたからだ。 

 さて、コロナで世界のすべての国の駐在の様子が激変した。このようなコロナの蔓延時には、異常時には、各国の政府の性格が露骨に出てくるものだ。強権をもって、ロックダウンを作る国もある。右往左往している内に、医療崩壊してしまう国も多数出た。その国からも出られず、その国に入ることもできなくなった。それでも様々な仕事やプロジェクトは動いている。そうなると、海外のその国に駐在している邦人スタッフは、なにものにも代えられないほど貴重なことがある。

「日本からいけないから、代わりに出席して欲しい」「代わりに契約書にサインして欲しい」など、様々な仕事がこのコロナ閉鎖世界でも飛び交ったことだろう。もちろん商社マンだけではない。メーカーの駐在員も、日本政府の関係者も大変な時を過ごしていると思う。

 コロナが治まってもワクチンができるまでは、家族で海外に生活することは、すごく難しいかもしれない。ここ数年は、海外駐在が大変化することになるだろうが、商社は、その変化こそが商材を作るものだ。

 輸入大国の日本が大豆、麦、バナナ、肉、海産物などありとあらゆる食べ物を、世界中から輸入しつづけ、資源やエネルギーを、無事に輸入し続けているのは、その裏に必死になっている海外駐在の日本人が頑張っていることを私は知っている。これから第二次、第三次のコロナの攻撃があると予想されている世界で、もっと厳しい情況になるかもしれない。

 同時に日本からの輸出もコロナで大きな変動を受けたに違いない。海外で建設中の巨大なプロジェクトは、ほとんどがコロナで中断となったろう。技術者が引き上げたかもしれない。膨大な追加の費用が発生しただろう。それらの再開にも、商社には活躍の場がある。コロナのワクチンができても、他の感染症が現れるかもしれない。そんな厳しい中でも、仕事は続いていく。コロナで世界のフロンティアが増えたのではないだろうか。そして、商社でなければできない仕事が増えるだろうと思っている。

 ただ、一つだけ心配がある。商社に入社してくる新人商社マンたちの気概が、現代の日本では変化してしまって、「国内に居たい」とか、デスクワーク、情報通信ワーク、テレビ会議オンリー、財務で稼ぐことだけに偏り、海外で人と会い、交渉し、信頼を勝ち取ることの関心を失ってしまったら、私の商社の未来への読みは間違っているのかもしれない。

 とにかくコロナで商社の海外での活動は大きな影響を受けるだろう。私が若かったら…。

考えるヒント 

(1)今後の、日本の輸出はどのように変わるだろうか?日本製だからこその信頼を受けるものは何か?

(2)災害大国日本は、災害対策を世界に拡げていけると思うがいかがか。その場合、商売になるのは何か?

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