考えるヒント 制覇 2 日本の時代から、現代の制覇へ

前回のエッセイで使い始めた“制覇”という言葉は、私がその漢字が好きで使ったが、もともと何かがあったところを、こっちのもので、抑え込むという感じがする。だから使い方が何か違うような気もする。

 日本にも一世を“制覇”していた時代があった。1970年代から80年代、日本の経済成長の勢いがすごかった。1ドルが360円から260円、160円に変っていっても、日本の工場は更に合理化を果たし、びくともしなかった。世界に受け入れられ、驚かせる様々なガジェットを作り出した。

 ビデオ(ベータ、VHS)もテープも、完全に、世界中日本製品だった。ビデオカメラも、ファックス機、電卓、腕時計、CD、カメラ、オートバイ、ウォークマン、大きなラジカセ、様々な家電製品、そして日本製の自動車が勢いをつけてきた。

 世界中どこに行っても、これら日本製品で溢れていた。世界の空港のお店は日本製だった。私はこの時代に海外生活して、世界中を出張していたので、どこに行っても、お客に会っても、メイドインジャパンだった。そして、それは品質の信頼のシンボルだった。ヨーロッパ以外の世界中で絶賛されていた。

 日本から見れば、最先端のもので、それだけ信頼できる品質の製品を、これだけ多品種製造できるのは日本人の誇りだった。“日本人はすごい。日本製品はすごい”と、まさに“世界の工場”と思っても仕方がないほど、日本製で溢れていた。しかし、すでに当時から繊維や、日用品、食品などは、日本製品はあっても、高価すぎるものになっていた。正確に言えば日本は、先端の民生電子機器の工場だった。

 ちょうど、現代の中国が世界の工場になっているのと比べると面白い。中国は繊維、日用品、食品、パソコン、スマホ、ありとあらゆるものが中国で作られている。まさに世界の工場になっているが、中国製品の内容は、最先端ではない。どこかに有った商品の続きのような似た商品が未だに出てくる。

 私は過去50年間、家庭用電子機器をウォッチしてきたが、日本が世界の工場と言われた時代、日本が毎年モデルチェンジする時には、何か話題を提供する新しい技術があった。カシオのG-Shockを使っていたのは、サウジアラビアの砂漠だった。その時に思っていたのは、たとえ私が砂漠で迷っても、G-Shockは生き延びるだろうということだ。

 中国製は、超安価で始まって、ようやくここ5年ほどで、それなりの品質ができてきた。しかし、私のような先端技術商品症候群の患者が飛びつくものがまだ出てこない。これは中国製が安い価格で他国の他社の既存の製品と闘い、そのマーケットを圧倒しようとしてきたからだ。

 カシオが作ったデジカメ、G-Shock、ビデオ機器、CD、DVD機器が、世界中の人々に技術的に新鮮な興味と需要を作ったように、中国が世界の工場を名乗るならば、まずは独創的な画期的発想から出発して欲しい。ときめく先端の品物を考えて欲しい。

 まったく今まで誰も考えなかったような、世界中の人があっと驚き、“中国製のあれが買いたい”と、買いたい人が、世界中で徹夜して、300メーターの列をなすような面白いものを考えて欲しい。私は技術の好奇心に贅沢だから、画期的なものがあれば、飯を削ってでも買う。

 手っ取り早く、今まであった技術やコンセプトで安く作ってたくさん売るということに邁進しないで、新規のものをどんどん考えて欲しい。世界の工場を称する国の企業の開発責任だと思う。

 いや、これからいよいよ、中国独自の新規の画期的な先端技術が出てくるのかもしれない。たとえば5Gの機器では、そのデファクトでの製品は、世界で一番早いから中国製品が最先端を行っているのかもしれない。カメラ付きドローンの製品もすでに中国製品の独壇場だろう。ドローンを発展させれば、ドローン型の空飛ぶ自動車、空飛ぶ自転車、空飛ぶオートバイ、あるいはロケットマンになるのかもしれない。その前に中国製の自動車の品質を安定化させてほしい。空中で故障しない物を作ってほしい。新しいロボットかもしれない。完全な自動運転電気自動車かもしれない。これらの機器は安全性も、安定性も保障されていなければならないだろう。

 付け足せば、

Every country has its days.という言葉がある。日本も、中国も、韓国も、最盛期があるし、あった。日本の経済が最高潮だった時、日本がもっと謙虚であったらと、当時海外から見ていて痛感していた。日本の東京の地価が、アメリカ全体の地価より高いなんて、バカなことが言われていた。日本も当時は驕りがあったかも、傲慢さがあったかもしれない。特に政治家は国際収支を背に日本の繁栄は永久だと思っていたのではないだろうか。

 西方の隣国も、そんな日本の反省すべき歴史を学んで、傲慢になってはいけない。世界の工場からの膨大な利益を軍事技術に注力させるのは、勘弁してほしい。

Every country has its ending days.

考えるヒント

(1)今、欲しいなあと思っている日本製品はあるか? 私はある。

(2)今、欲しいなあと思っている中国製品はあるか? 今、探している。

(3)今、欲しいなあと思っている欧米製品はあるか? ある。

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