考えるヒント アイデアマラソン哲学 25 その1 継続支援システム(ETS)の発明

1.最初のアイデアマラソンのグループ研修の衝撃

 2014年にアイデアマラソン研究所を作って、すぐにIT関係のA社で新人研修を請け負った。2回の研修を3カ月開けて行う。1回目の研修の時、新人たちは全員がやる気満々で、私が話すアイデアマラソンの考え方に共鳴してくれているのが良く分かった。1回目に全員にアイデアマラソン用の専用ノートを渡し、講演と演習を行った。講演と演習にも素晴らしい反応を見せ、質問も多数出たのを覚えている。これだけの反応なら、継続してくれると私は思った。

 第1回目の研修の終わりに、3か月後の2回目のアイデアマラソンの研修まで、1日に1個以上の思い付きを、何でも構わないからノートに書きとめて欲しいと言った。それが2回目の研修までの課題だった。全員のやる気の高さは、演壇で話していた私に伝わり、私は大いに期待した。

 そして、3カ月が経過して、全員のアンケートを取ったところ、それまでの3か月間を毎日自分の発想を書き続けた参加者たちは、3割を切っていた。私は大きなショックを受けた。7割以上が3か月間の間に中断してしまっていたのだ。

 「つい忘れて」とか「仕事が忙しくて」や、「何を書けば良いのかわからなくて」というコメントが多かった。全員の発想数から見て、数日で止めた人も何人かいた。1週間から3週間の間の中断が多かった。

 2回目の研修そのものは、前回と同様に非常に意欲の高い反応を示していた。

研修の後で、その会社の研修担当との打ち合わせでは、

 「樋口さん、研修とはそんなものです。歩留まりがありまして、やる人の割合は、1割とか2割になるものです。今回の3割ならマシな方です。いつもは2:8のパレートの法則が利いてくるのです。他の研修でも同じですよ」と言われて驚いた。たしかによく考えると、一端中断してしまうと、人は、その中断したことを正当化することで、再開は極めて難しくなる。

 どんなに最初の研修でやる気を醸成されても、熱心な気分になっても、始めた後、

(1)単にすることを忘れる

(2)忙しすぎる

(3)ノートを自宅か、会社に忘れる。あるいは、いつも持っていない。

(4)ちょっとしたことで、理由もなく停止する

(5)何を考えて良いか分からない

(6)面倒くさくなる

(7)大した発想が出ない

などが口実だ。どんなに素晴らしい研修であっても、その研修後、放置していると、三日坊主、3週間後、3か月後とどんどん中断してしまうことになる。

 誰もが覚えのある何かの中断、日記や毎日の運動や勉強で、中断、三日坊主にしたことは何度もあるはずだ。

2.2回目以降の研修で継続支援システムの開始

 アイデアマラソンのように、やろうと思えば、必ず実行可能で、難しいことではないものを、中断してしまうのは、絶対に認められないと、私は考えた。

そこで次に引き受けた電機メーカーの40人のアイデアマラソン研修で、初めて「継続支援システム」を取り入れた。今回は6か月間に4回の研修だった。

 それは1回目の研修の終了時に、「今日、みなさんが開始したアイデアマラソンですが、これから毎日1日に1個以上を配ったノートに書き留めてください。1週間後に発想の累積数だけをアイデアマラソン研究所にメールで送ってください。私からは、皆さんに激励と考えるヒントを送ります。思いついた発想の内容は送る必要ありません」

 1週間後に全員が総発想数を報告してきた。三日坊主の中断者は誰もいなかった。私からは考えるヒントやアイデアマラソンの考え方をメールで送った。

 それから2週間後に2回目、そして、1か月目の2回目研修、3か月目の3回目研修、6か月目の4回目研修が行われ、その間に2週間から3週間ごとに、合計9回の累積発想数の報告を受けた。半年後、40名の内で中断状態になっていたのは2名だけだった。

 私は一度も強制の言葉や罰則などは使っていない。しかし、見事にほぼ全員が最後までアイデアマラソンを続けた。平均1日1個を満たさなかった参加者は10名ほどいたが、それでも中断はしていなかった。私はこの継続支援システムをETS(e-Training System)と名付けた。継続支援システムの発明だった。

 それ以来、アイデアマラソンの集合研修では、必ず継続支援システムETSを付けることにした。そして現在にいたるまで15年間、数十社で、合計数千人以上の研修でETSを行ってきた。

 グループアイデアマラソンの企業研修では、ほぼ全員が真面目な参加者で、創造性の開発には必要性を理解していても、放置していると、居眠り運転に近い中断現象が起こる。それを「やっていますか」と声を掛けるだけで、ハッと気がつき、再開するということだ。この声掛けでは、インターネットほど便利なものは他にない。電話では強すぎる。手紙も効果があるが、配達されるまでの時間が掛かりすぎる。

 インターネットは最速で参加者の懐に飛び込むのだ。それも励ましの言葉や初期のやる気を思い出す言葉をならべて、考えるヒントも書く。

 アイデアマラソンは習慣化をめざす研修であるから、最低3カ月などの期間を継続していると、何かを思いついた瞬間に、手元のノートとペンを探し、書き留めようと反応するようになる。

 企業や研究所だけでなく、ETSは大学においても同様の反応が出る。そして一番うれしいのはETSの評価表を見ていると、急に発想数が急上昇して、思考の意識、創造の意識が高まる人が、何人かいるのだ。アイデアマラソンに自分の仕事や人生に目覚めるのだ。教育や研修は、励ましであり、気づきである。

 このようにアイデアマラソンの研修にとって、継続支援システムETSは極めて重要な要素になっている。

考えるヒント 周りにあなたを励ましてくれる人がいるか?その人に、自分の人生をいかに構築するかを話しているか。

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考えるヒント アイデアマラソン哲学 25 その1 継続支援システム(ETS)の発明」への1件のフィードバック

  1. ソルチョ 返信

    誰しもが中断の危機は迎えるものですね。ボクの場合もアイデアマラソンを始めてから3カ月目に、東日本大震災に見舞われました。やる気をそぐものには天災もあるわけで、気力ばかりではありません。でも持っていた「企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法」を繰り返し読んでいて、2カ月後に復活。いまやアイデア数10000に達しようとしています。こういうやる気を引き出してくる本との出会いも必要なのだと思います。自分にとっての聖書を持つことが必要なのでしょう。

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