シルバー・アイデアマラソン 4(50歳以上を10倍楽しむ方法)シルバーエイジがはまり込む陥穽

シルバーエイジにとって一番恐ろしいのは、人生に自信をなくすことだ。

50年間に味わったことのない屈辱的な自信の喪失が、現役から離れ、いわゆる引退すると数年間に起こる可能性が非常に高い。

 やっかいなことに自信をなくしても、本人は、それを廻りに相談できない雰囲気がある。自尊心ってやつだ。相談できないままに、どんどん内側にこもり、退化が進行していく。そのシナリオは次のようなものだ。

 待ちに待った定年。当面、半年ほどは、のんびりしようと思っている。金銭的にひっ迫し困っているわけでもない。(あれだけの自分の実績と経験があるのだから、引く手あまただ)と自信がある。

定年になった日、家族が祝ってくれて、次の日の平日の朝、目が覚めるが、(会社に行かなくて良いのだ)と気がつくと、まったくストレスが無くなっている。これは最高の感じである。

 「もう起きてきたの、ゆっくり寝ていれば良いのに」と奥さんに言われる。

朝食後新聞を読んでいたら、もう昼に手が届く時間だ。平日にこんな静かに過ごしたことは一度もない。奥さんは洗濯や掃除、そして昼の準備と忙しい。

 昼食後、ぶらりと散歩にでかけるが、まったくストレスがないことで新世界に移住したように新鮮に感じる。ここまでは、すべての退職者が感じる最初の状態だ。

 これから3か月間には、奥さんと退職記念の旅行とハローワークへの定期的訪問が予定となっているだけ。

 二日目も似たようなものだった。

 三日目に朝、二度寝していた。「どうしたの。あなたらしくないわね。味噌汁が冷めましたよ。朝ごはんは一緒に済ませてね。私はお出かけするから」と奥さん。(退職したんだから、少しはゆっくりさせてくれよ)

 食事の後も、休み疲れが出てきて、眠気が襲う。

 一週間目ころから、ほんの少し奥さんの態度が変わってきた。言葉は同じでも、(どうして何もしないの)という感じが入っているのが分かる。

 奥さんからみると、今までは朝、ご主人が出て行ったあとは、本当に自由だった。昼も、昨日の残り物で済んだ。ご主人がいると、一応料理が必要で、それだけでも疲れる。

 午後もご主人がのんびりしていると、逆に反発を感じ始める。基本的には、この構図で、奥さんのストレスが増し、それがご主人に流れ込み、無理で、目的なしに外出が始まり、飲みに出かけることが始まると、奥さんは余計にストレスを感じ始める。

 このような夫婦のもつれは、誰も想像できるだろうと思う。それが意外と多いのだ。

 奥さんは、(家でごろごろしていると本当に目障り)

 ご主人は、(何で、あんなにカッカくるんだ。私が何をしたというのか)

 定期的に訪問するハローワークで、求人のコンピューターを叩いていてショックを受けるのは、定年退職者への求人がほとんど無いことだ。あるのは、マンションの管理人や、道路工事の安全ガイドの仕事だ。

 (自分の仕事ではない)と思いながら、気分は落ち込み、家に帰っても気分が沈みがちのところで、

「どう、仕事見つかりそう?」と追い打ちをかけてくる。今までに感じたことのないストレスだ。持っていた自信は粉々になってしまう。

 この辺りから、人によって色々方向が変わってくる。

(1)奥さんがどう思おうと、平然と自分の生活を続けていく人もいる。ただ、内心はストレスと自尊心が砕かれた屈辱を隠している。がんこで、偏屈な年よりの始まりである。

(2)奥さんに逆当たりして、お互いのストレスがどんどん高くなる人もいる。これには、奥さんが耐えられなくなる可能性も高い。もう昔の社会ではない。奥さんの方がよほど社会的適応性が高い。

(3)与えられた社会的環境の中で、与えられた仕事を始める人もいる。そのような人も、すぐに慣れてくる。慣れて、静かにおとなしく人生を過ごし始める。自分の可能性を考えることもなく、ただ時間の過ぎていくのを受け入れていく。

 退職するまえは、もっと色々な活動を考えていたではなかったか?バラ色の生活を想像していなかったか?それが退職して半年もしない間に、縮こまってしまい、真性の年よりになっていくのだ。

 こんなはずじゃなかったに。こんな余生を過ごすはずではなかったろう。と思っても、動きが取れないように思ってしまう。

 見えないロープでがんじがらめに縛りつけられたような生活が毎日続くと、それが普通になってしまう。こうして、心の中で自信が消え去ってしまう。

 ただ、こうした生活の構造変化が悪いと言っているのではない。私が気にしているのは、その人が持っていた、持っている様々なポテンシャルはどうなったか?なぜそれを使おうとしないのか?どうして自信喪失のままで耐えられるのか?まだ、60歳や70歳は、現在の日本では、まだまだ活動できる範囲内だ。この年代の男女を活動圏内から追い出してしまったら、高齢国家日本は、マヒ状態になってしまう。

 逆に言えば、このシルバー世代をいかに活性化させるかで、日本の未来が掛かってくるのだ。

このような閉塞回路に陥る前に、何をすれば良いのだろうか。あるいは、陥ったあとも、どのようにして脱出すればよいのかを提言したい。それはシルバー・アイデアマラソンで人生のバックボーン(背骨)を造ることだ。

考えるヒント まわりを見渡して、昔は非常に頭が切れた。発想力が豊かで鋭かった。会社では一目も、二目も置かれていた人が、定年後、何もしないで、にこにこ、ゆるゆるの好々爺になっている。あるいはガミガミ親父になってしまっているというのがいないか?

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