ベトナム語の表現で「自分の右足が左足を蹴る」というのがある。つまり自業自得
という意味だ。
いつ終わるか分からないコロナと「布・不繊紙とガーゼを挟んだ複合多重オリジナ
ル・マスク」を付けて外出し、忍び寄る寒さは別として、パソコン打ちすぎの腱鞘
炎、かなりしょぼしょぼの視力、論文、執筆と、自宅に座ったまま、自分の右足が左
足を蹴る状態が2月から続いてきた。
朝から、机にかじりついていても、夕方6時になると、意を決して、外に5キロの散
歩に出かける。自転車を押しながら、自転車のハンドルテーブルにNHKのラジオ英会
話の10年前からの1冊を載せて、工夫で斜め上からLEDライトを点灯照射して、前方に
注意しながら、英語会話の丸暗記をする。
暗くても、読める。交番は3か所あるが、呼び止められたことはない。もう4年続けて
いる。
散歩のルートはいくつもあるが、目的に買物が加わるとコースを修正する。突然の
雨にも対応するように、荷台にはビニールポンチョが張り付けてある。スーパーの近
くにくると、ヨメサンに電話して、「あなたのコンシェルジェだが、何か買うものは
あるか」と尋ねることにしている。
広い通りではないが、2車線の歩道付の道路を自転車で押していると、小さな間口
の店の前に、「自由にお持ち帰りください」とあった。
(1)シチズン振り子時計
この言葉には、弱い。さっそく見ると、老人用の拡大レンズ、「ああ、これはヨメ
サンのお母さん、喜ぶぞ」とゲット。
その横に、ドデカイ70センチほどの豊穣の女神が時計を持ち上げていた。振り子が
付いている。店の中に女性が一人店番していた。
「この時計もタダなんですか?」
「そうですよ。時計は動きます」
「じゃ、いただきます」と持ち上げたら、鋳物でずっしりと重い。
自転車がぐっと重くなったほどだ。重量荷物を運べる最強ママチャリパワーアシスト
自転車あってのことだ。
(2)錆びた銀器
店の中にも、様々な食器など、明らかにどこかのレストランが閉店したのだろ
う。見ると、店の隅っこに、50本ほどの、錆びた銀器(メッキ)のナイフ、フォー
ク、スプーン、蟹さんほじくり細身フォークなどがある。全部錆びていて、汚れてい
る。
「これをまとめて買うといくらでしょうか」と、出た出た私の好奇心!
店員は判断できず、電話で誰かと相談し、「いくらでも良いそうです」との答え。
しかるべき金額を支払って、さらにその銀器を載せて、家まで運んだ。
(さあ、断捨離のヨメサンがどう言うか)と思ったら、たちまち、銀器の多さに
虜。机で分類開始。(やー、良かった)
その晩、ヨメサンは、こっそりと銀器磨きで蟹さんほじりを2本磨いたら、見事にピ
カピカ。
「おい、私にも磨かせてくれ」と頼んでも、
「だめ。これは私へのプレゼントでしょ。磨くのは私」
そうだった。家に持ち帰った時に、買い物の自己防衛の理屈で、言葉のあやか、「
これね、お前にプレゼント」と一言口を滑らせてしまった。
錆びた銀器を磨くことほど、楽しいものはない。液体磨きなら、ほんのひとこすり
で、ピカピカとなる。
「一緒に磨こうよ」
「ダーメ。技術がない人は、まず私のネックレスでも磨いてごらん」と来た。銀器は
放置すればまた錆びる。(いつか、絶対にやるぞ)
ところで、70センチ高の豊穣の女神振り子時計は、時計は動くのだが、振り子は動
かない。私は近所の時計屋さんに持ち込んで、振り子部分を洗浄してくれたら、見事
に動くようになった。大成功!予想もしないところで、小さな宝箱を見つけた気
分。
すべてのストレスがその夜は消えて、良く寝られた。これを買物療法(Retail
Therapy)と呼ぶ。
考えるヒント 何か一見、普通のもので、汚い、何をするのかという物を手に入れ、
周りは「それ、何するの」と言う。それを手入れしたら、パーと輝くものになった体
験はあるか。思い出して、エッセイに書こう。
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