考えるヒント 通じるか、通じないか

NTTがドコモを完全子会社にしようと決めた。

そうするだろうとは思っていた。この決定が遅れたら、ドコモがNTTを完全子会社にしたかもしれない。実際、迫力から言えば、ドコモがNTTを吸収してもおかしくなかった。稼ぎが違う。5Gで膨大な投資が始まっているので、それが進めばドコモの資産はうなぎのぼりとなる。米国での話なら、こんな場合は、ドコモがNTTを買い取ることになっていたかもしれない。それほど有線式の電話(以下、普通の電話)が使われなくなってきている。公衆電話は絶滅危惧種だ。ただ、それで良いというわけではない。

 私の家族の息子たち3人の大多数が、すでに自宅で有線の電話を持っていない。二人とも引っ越しを機に普通の電話を設置しなくなった。

 その途端に常に連絡を取れるとは限らなくなる困った事態が起こった。明らかに自宅にいるのに、携帯で呼んでも出ない。最初は故意に出ないかなと疑心暗鬼になったこともある。自宅にいたらとにかく電話は通じるという世界が崩れた。携帯をカバンに入れているとか、充電器においていて、サイレントのマナーモードにしているということだろう。

 これには軽いショックを感じた。電話は相手が在宅なら必ず連絡が取れるという安心感で私達「年寄りたち」が過ごしている。その時代が終わったのだ。

もう息子たちの時代では、携帯を通じてのネットワークしか頭ににない。3分10円式で長電話する時代は終わった。ところが、スカイプ、ライン、ズームと、画像付き電話がスマホでも、パソコンでも、無料で使える時代が来てしまった。これじゃ、NTTもたまったものではないと誰でも分かる。

 それも世界中の友だちと、立派な音声や動画付きで、夜間、昼間逆転で、挨拶が「おはよう」「こんばんわ」で無料で話せるとは、とんでもないすごい時代だ。

 今や、我が研究所の有線にかかってくる電話は、ほとんどが勧誘や、売り込みの電話になってしまっている。それでも私はアイデアマラソン研究所に普通の電話を残している。それは昔からの危機管理対応としての複数の通信手段の冗長度を図り、いざという時のために、二重化、三重化することが私の主義だったからだ。

 阪神大震災が発生した時、早朝のテレビが伝えた途端に私は普通の電話で、神戸の友人の自宅に掛けたら、もう通じなくなっていた。そこで携帯電話で、掛けてみたら、通じたのだ。

「もしもし、XXさん、地震があったって、生きてる?」私は、あんなに大地震と思ってなかったから冗談を言ってしまった。

「ああ、タケちゃん(私のこと)、…死に掛けた。…頭のすぐ横に、大きな仏壇が倒れてきた。腰が抜けてそのまま起き上がれなかった。停電だった。どれだけ時間が過ぎたか…。電話が鳴っていたので、這うようにして出たら、タケちゃんだった」

「そんなにひどいの?」

「ひどい。家が相当壊れた。まだ揺れてる」

「ええっつ」

「タケちゃんの声を聴いてようやく生きた心地がした」

「がんばってね」と言って携帯を切った。その5分後にもう一度その友人に電話を掛けたが、もう通じなくなり、5日間ほど通信が途絶えた。

 有線の電話は大地震後、すぐに通じなくなったが、携帯電話は神戸市内の別の接続点でつながるので、すこし後までかろうじて通じたのだ。そして、携帯もすぐに通じなくなった。今日、大地震がおこったら、携帯も優先通話のために、もっと即回線が通じなくなるように自動設定されているという。

 その代りにメールは通じると言われている。

 我が家では、家族全員で大災害、特に大地震の発生時に、グループ通話で、無事をショートメールする訓練を何回か実行した。そのおかげで、東日本大地震の時に、ヨメサン以外は、全員が無事だと携帯でグループメールを使って、即確認できた。あの時から、世の中の通信は携帯に進むだろうとは思っていた。

 ところが、一つだけ、解決しなければいけないのが、危機管理的にみた電話の通じるかどうかだ。このまま行くと、自宅にいても、携帯で通じないという異常事態が生じる。私のように高齢者には、命の問題だ。それは危機管理上非常にまずい。

ここにビジネスチャンスができてくると思う。まだスカイプもラインも使い心地が今一つのところがある。ズームも手続きが煩雑だ。これをシンプルにする第3の自宅用通信機器が開発されるかもしれない。家族間だけで必ず相手に通じる音声のホットラインや緊急メッセージ電話があってもよい。無料で!

考えるヒント 火星に住む友人とZoomで話す時、距離がありすぎて会話がお互いに遅れるが、その場合に普通の会話をするには、どうすればよいだろうか考えてみよう。

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