考えるヒント 恐怖と生体反応

 30年近く前、三男がまだ小学生だったころ、私は妙なことを始めた。

三男と中1の二男に、寝物語、寝る前のお話を1つしてあげることだった。(長男は高1で、勉強続行中の時間)子どもたちは、一部屋に布団を敷いて、そこで川の字になって寝る。そのうちの2人が寝かけているとき、

「はーい、父ちゃんのお話出てこいの時間だよ。今日も、怖いお話を一つ持ってきた」と乗り込む。

 私が決めたのは、(どこまで続けられるか分からないが)怖い話を一つ寝物語として、子どもたちにすることだった。

 海外生活21年、学生時代のオーストラリア2年、三井物産の海外駐在員として、アフリカの西海岸のナイジェリア・ラゴスに3年半、中近東のサウジアラビア王国のリヤドに8年半、東南アジアのベトナムのハノイに2年、そして南西アジアのネパール・カトマンドゥに4年半だった。

 そのうち、学生時代のオーストラリア以外は、家族を連れて行った。様々な体験をした。

 私がする怖い話は、私が実際に体験した、私自身が怖いと思った話を一つすることだった。子どもたちに話した怖い話は、話したあと、ワープロで文章にした。

 無茶苦茶怖い話もある。サウジアラビアで体験した猫の祟りや猫のお葬式のことは、生涯忘れない。学生時代のオーストラリアでの体験は、甘酸っぱいが、よく考えると怖いというあと味の話だった。

これを毎日、夜中に、子どもたちに一つずつする。思いつくことが、大変な苦労が必要だった。

 二男は、平気な顔をしていたが、三男は、

「はーい、怖いお話だよ」

「怖い話は聞きたくない!」

「たいしたことないって」

「本当に聞きたくない。怖いよ。悪い夢を見ちゃうよ」

「そんなケチ言わないで、今日の話は、そんなに怖くない。聞いてやってくれよ」

「この前、そう言ったのに、無茶苦茶怖かったじゃない。ひどいよ」

 三男は、布団に潜り込んでしまう。

 布団をめくると、

「やだ、やだ」と言いながら、三男は目に重ねた指の間から見ている。

 そこに潜りこんで、話をする。怪異の話もあるし、遺伝子的怖さの可能性の話もあった。リンチに遭って殺されかけたこともある。全部で40件ほど、話をしていた。その内から、大部分をキンドルで出版した。

 一端、聞き始めると、三男は興味をしめして、質問もでてくる。

(もし関心を持たれたら、私の実体験の話は、キンドルの「ビジネスマンの面白恐怖」を読んでいただきたい)

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 三男は、怖い話を聞いた後、「ああ、また怖い話を聞いてしまった。ぼくはなんて不幸なんだ」と言いながら、寝ていった。

 私は当時、出向中の会社にスクーターで通っていた。帰宅すると、駐輪場での音が聞こえる。すると、三男は、二男に

「ぼくもう、10分前に寝たからね」と寝室にこもって、息を殺して、父ちゃんが怖いお話を持ってきませんようにと祈っていたらしい。まだ、起きていることが分かったら、父ちゃんが、すぐ

「おーい、今日の怖いお話、でっこ~いの時間だよ」と飛び込んでくるからだ。

 怖い話を実体験からで話しようとすると、これは本当に大変。脳みその隅っこの記憶を掻き出す必要がある。私のアイデアマラソンの訓練の一つだった。そして、親子の伝承と連携という勝手な理由を付けていた。さらに、三男は息を殺して、自分の(寝ている)気配づくりの努力をしていた。

しかし、最後の方になると、「今日の怖い話を聞いてくれる」と寝室に飛び込むと、

「ハイ、ハイ」と素直に聞くこともあった。「どっちみち、父ちゃんは怖い話をするんでしょ」と、開き直ったこともある。本当は、心の指の隙間から私の怖い話を聞きたかったのではと思っている。

 いまや3人の息子たちは、ヨメをもらい、外に出ていった。私はヨメサンと二人きりだ。

家に戻り、玄関ドアを開けて、リビングに入った。

何の音もしなかった。気配も何も無かった。ヨメサンはどこかに出かけたのかな?カバンを置いて、台所に行こうと思って、ふっと左側のリビングの奥を見たら、そこのソファーに座って、ヨメサンが本を読んでいた。

ドキンとした。一瞬の恐怖感だった。

 ヨメサンが座って、本を読んでいるのにまったく気がつかなかった。ヨメサンからは生体電磁反応を感じなかった。

私が帰宅したら、「おかえり」とリビングのドアを開けた時に、言ってくれればよいのに、静かに、存在感を消して、殺気を起こさなかったから、驚いて、恐怖感にすらなった。

「わあ、驚いた。そこにいたのか」

「いたわよ。何よ。おかしな人ね」

完全に気配を消す。これは殺気を発することの裏返しだ。殺気を発しているから、殺気を検知できるのだ。ヨメサンのように殺気を消されると、これは検知できない。昔の忍者は、自分の気配を消す鍛錬をしたという。壁になりきり、木の枝に成り切った。いつか、ヨメサンを師匠にして、息子たちと一緒に、自分の気配を消すトレーニングを受けよう。何の役に立つかな?

考えるヒント

(1)怖い話を書き留めよう。

(2)自分の気配を消して、家族にどきりとさせよう。(後で謝ること)

いいねとコメントをお待ちしております。アイデアマラソンもがんばって続けましょう。

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