考えるヒント 事務所内の感染対策

SARSが流行した2003年、私は三井物産のネパール・カトマンドゥ事務所長だった。中国と国境を接しているネパールで、噂やデマは多く非常に恐怖感を覚えた。結果的には、ネパールでの感染はなかったが、こわごわの3か月を過ごした。その間の自衛策を書く。

(1)入口

 私は事務所の感染防止対策に取り掛かった。まずは、玄関に特別の受付係を置いた。その係の仕事は1日中、訪問してくるお客に、アルコール系の殺菌液を手に振りかけることだった。

所員全員の体温もいちいち殺菌して計っていたように覚えているが、確かではない。

受付係は女性だったが、マスクを着用させた。

 ここまでは、現在の日本でもほとんどの事務所でなされているものだ。

 玄関から事務所に入る前に、私はトタン板で、深さ7センチ・幅は1.5メートル、奥行きは1メートルの金属の平べったい器を特注させて、その中に、玄関に置いていた靴の汚れ落としのマットを入れた。その上に、クレゾールの液体を注ぎ、水を足して、事務所に入ろうとする者は、所員であれ、お客であれ、靴の底をクレゾールの液で殺菌することにした。多少の臭いは我慢だ。

 日本の住宅では、靴を履いて家に入らない。海外ではほとんど、靴を履いたままだ。靴は、道路を歩いてくる間に、ウイルスを踏みつけて、拾ってくる可能性が非常に高い。家中に、靴でウイルスをまき散らしていて、埃と一緒に吸い込んでいる可能性がある。だから日本の住宅の靴を脱ぐことと、欧米の靴を履いたままの違いがここからも出ているのではないだろうか(下駄ばき居住の感染仮説)。

 このことから、事務所での入所は、養鶏場や養豚場の履物殺菌と同じことをすべての事務所で行った方がよいだろう。ウイルスは歩いた道で引っ付いてくる。

 待合室のソファーは、受付の女性が、お客が帰るたびに、ソファーをクレゾールの希釈液で拭いていた。

(2)面談

 ビジネスマンだから、海外だから、当然、会う人ごとに、握手をする。相手が感染していたらどうしようかと考えて、握手後殺菌袋を作った。それは背広のポケットの両側に、ジップロックにガーゼを入れて、そこにアルコール消毒液をしみこませた。

 私はお客と握手するたびに、握手をした手を背広のポケットに入れて、ジップロックの中のガーゼを握り、手を殺菌していた。このことは当時は絶対に誰にも言わなかった。相手を侮辱していると取られる恐れがあったからだ。

 今はジェリー状殺菌液の小瓶をポケットに入れていて、思わず素手で触ってしまったエスカレーターの縁やエレベーターのボタンなどの後、ジェリー殺菌をしている。

(3)マスク

 マスクは事務所で備蓄した。全員に毎日古いマスクと交換で新しいマスクを配布した。事務員、秘書、お茶くみ、お掃除のおばさん全員がマスクをした。

(4)航空券

 私は日本までの航空券を入手していた。ネパールでSARSの集団発生が生じたら、一気にバンコク、あるいは日本に脱出することを計画していた。その判断は、所長の私が決めることだった。

(5)自宅での対処

 自宅(所長社宅)では、入り口で靴を脱ぎ、中はスリッパに着替えることにしていた。ガードマン、お手伝いさんもみんなマスクをしていた。この点の指示には、非常に従順に全員が従っていた。彼ら、彼女らも、SARSが怖かったのだろう。お手伝いさんは毎日午前と午後に全フロアをクレゾールを含んだ水で拭き掃除するように指示していた。

 こんなに私は怖がりだったが、何も起こらなかった。解除したのがいつか忘れたが、通ってくる女性たちはその後も通勤には長くマスクを着用していた。

 今なら、フェースシールドを着用することを全員に勧めていたかもしれない。

考えるヒント

(1)事務所内、学校内での感染防止の対策で、上記の内容と別にできることがあれば、コメントに書き入れてください。

(2)コロナに負けない免疫を付けるためにやっていること、やろうとしていることを、調べて考えて実行しなさい。

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