考えるヒント チームの(意識の)覚醒

 ドイツのニュルンベルクの近郊のバンベルグにあるシーメンスメディカルの本社工場で、アイデアマラソンの講演をした後、ホテルに戻ったら、シーメンスの技師長から電話がかかってきた。(注:シーメンスメディカルは、現在のシーメンス・ヘルスケア)

 「技術上で一つ大きな問題があるのです。それを長く解決できないで困っています。問題の内容は機密なのでお話しできないのですが、アイデアマラソンを活用するとして、数カ月で解決するには、どうすればよいかをアドバイスいただけませんでしょうか」という内容だった。

「関係している人は何人いますか」

「チームは10人ほどです」

「そうですね。チームでのアイデアマラソンのソリューションでは、『3週間法』が良いかもしれません。全員、その問題を解決したいという気持ちは強いですか?」

「非常に、強いです」

「それであれば、今日、全員に新しいノートを渡してください。そのノートに、その問題を解決する方法と、問題の詳細の説明や思いついたこと、関係があるものを、毎日10件ずつ書き留めるように言ってください。これがいかに緊急で深刻な問題だと強調してください。そして、その書き留めた数だけを全員がどなたかに、毎日報告するように言ってください。3日目くらいから発想が底をつくかもしれませんが、とにかく毎日10個の発想の数を守るように、思考し、ノートに書くように指示してください。ノートとペンは常に携帯して、どこでで思いついても書けるようにしてください。もちろん技師長も率先して発想を書いてください」

「はい」

「そして、10日後に、一人100個の発想を提出します。10人ですから、1000個集めて、全員がリストアップして、提出します。そして11日目に全員で会議を開きます」

「なるほど。10個というと結構難しくて、出せない者もいますが」

「結果的に出せない場合は、構いません。ただ、内容を問わないで、発想の数を強調して『頑張ってくれ』と励ましてください。どんなに細かいことでも構わないから、その問題の周辺を書くようにと技師長の真剣な指示をだしてください」

「分かりました」

「問題はここからです。提出された提案は、ほとんど今まで考えられたものが多いでしょう。ただ、1000個近くが集まったとすれば、面白い発想が10個程度混ざっているかもしれません。事前に誰かが、全リストをチェックして、数百にショートリストしてもよいでしょう。同じ種類の発想はたくさん入っているはずです。突飛な発想は残しておきましょう。

 会議の最後に、技師長は、数個の面白い発想がまざっていることは認めた上で、こう言ってください。『今日の会議での提案は、だめだ。こんなことをしていたら会社がつぶれる』と怒りをはっきりと示してください。テーブルを叩くのも良いでしょう。そして、黙って下を向いてください」

「はあ?」

「そこで、技師長の次席の方に事前にお願いしておいて、その人が『まあ、まあ技師長、おっしゃることは分かりますが、どうでしょうか、もう一度10日間、みんなにチャンスを与えてください。今度は毎日5個でも、みんなでアイデアを考えませんか?せっかく面白そうなアイデアも出てきていますから。どうだ、みんな?』と仲介に入ります」

 そうすると、「やります」とか、「考えさせてください」とかいう言葉が聞こえてきます。

「なるほど」

「そこで技師長は、『分かった。真剣に考えて欲しい。では今日から更に10日後に2度目の会議を開こう』と了承してください。

会議で怒りを見せて、一度全部を拒絶するところから、全員が真剣な問題の検討が始まるのです。1回目の会議の終了から始まるのです。こんな変則的なやり方は、1度しか使えませんからね」

「分かりました。やってみます」

 それから約3カ月後、技師長からメールが入って、「おかげ様で、問題が解決しました。ありがとうございます」と書かれていた。どんな問題だったかは、まったく知らないが、実際に体験したチームワークでのアイデアマラソンの威力だった。

深刻な問題を抱えていて、解決できなくて困っている場合、チームでアイデアマラソンを開始するのが一つのソリューションだ。

良い悪い、できるできないを問わず、すべてを書き留めることで、解決策を集めてみよう。あるいは問題の細分化を図ってみよう。

考えるヒント

(1)今の仕事や専門での問題点は何か?

(2)新しいチームで何かをするとすれば何をするか?仕事でも、プライベートでも、社会でも構わない。

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