考えるヒント 商社マンと研究者の共通根

私は商社マンを33年、その後、研究者(約16年、継続中)になった。

気がついたのは、商社マンと研究者に共通している必要な要件だった。それは「好奇心」だった。

 まだ商社マンだった時に静養休暇を取って、家族で南フランスのナルボンヌの近くの友人アンドレの家を訪問した。新築の一戸建てだったが、まだ外の塀は完成していなかった。住所と、ミシュランガイドがあれば、フランス全土どこでも行ける。

 レンタカーで、アンドレの家の玄関に到着した。家の前の道は舗装されていなかった。

私は運転席のドアを開いた。フランスでの必須好奇心から、運転席を開けて、まず地面を見なければいけない。日本のように、そのまま靴を地面に降ろしてはいけないのだ。それは日本とフランスの根本的違いの、犬の糞を放置するフランス人の習慣があるからだ。

 パリでも、どこでも道路は犬糞だらけ。2回犬糞を踏んづけた経験があり、そのたびに、旅に持っていた歯ブラシを犠牲にした。車のドアを開けたら、まず下を見て、犬糞がないかを確かめるのだ。

 アンドレの家の前でも油断はできない。私は下を見た。「犬糞は無い!」と指さし呼称をして、ふっと目に入った。地面に小さなキラリという光だった。

 普通ならガラスの破片とするだろう。犬糞がないのだからと、私は手を伸ばして、そのキラリを摘み上げた。ゾロゾロと出てきたのは、30センチほどの長さのどっしりとした純金のネックレスだった。土にまみれている。

「な、なんだ。こんなもの見つけちゃった」とヨメサンに見せたら、仰天。

 私はそのどろどろ純金ネックレスを、左手にぶら下げたまま、アンドレの家のドアノッカーを叩いた。私たちが今日到着することは知らせてあって、彼の海岸の別荘に泊めてもらうことになっていた。

「タケオ、ウエルカム」とドアを勢い良く開けてアンドレ、その後ろに彼の奥さんのマリーズ。

 私の顔を見たあと、私が左手にぶら下げていたネックレスを見て、マリーズが、

「そ、それ、どこに有ったの。去年、無くしてしまったの」と叫んだ。

「そこの地面だよ」

「わあ、ありがとう。タケオが幸運を持ってきてくれた!」

 マリーズは、(フランス)料理の達人。料理も更に大歓迎を受けてしまった。ワインなんかポリタンクで飲み放題。ほんの商社マンの好奇心の応用だった。

 好奇心を持たない商社マンは、面白くない。ビジネスは固定的で、観念的になり、儲けのことしか考えていない。臆病になり、猜疑心も強い。人との長い付き合いを作っていくという気持ちも、好奇心が欠如すると起こらない。

 一つのビジネスも、何もしないで自動的に続いていくことは、ほぼなくなった。乾いたパンに黴が生えるようなもの。また、今まで儲かっていたが、明日になると突如強力な競争相手が海外から現れて一気に市場を奪われることもある。

 常に新しいビジネス、商品、やり方を求める。これは好奇心という精神的ビタミンがないとできない。そのビタミンは気づきで作られるが、気づきを書き留めておかないと、揮発消滅する。思いついたときに、書き留めるアイデアマラソンを実行することが好奇心ビタミンを蓄える方法だ。

 現役時代に、「商社マンの仕事はこんなに面白い」

https://www.idea-marathon.com/books/

の原稿を頼まれて、私は三井物産の本社で同僚たちのアンケートを取ったことがある。

 「商社マンにもっとも必要とされる素質は」の質問に、「好奇心の強いこと」が最も多かったのには驚いた。貴重な素質なのだ。

 研究者も同じだ。ほんのちょっとした変化や、普段は見逃す徴候、「あれを使ってみたら…」といういたずら心は、好奇心度が高くないとでてこない。潮干狩りと同じで、アサリを10個見つけたところで、同じ場所の土を掘り続けても、もっとアサリが見つかるわけがない。周りを掘ってみよう。そこにはもっとたくさんアサリがあるかもしれない。

 掘って、掘っていく。ひと掘り、ひと掘りが思考であり、その中にアサリがあれば、書き留めていく。それがアイデアマラソンだ。アサリの貝殻の模様も結構美しく楽しめる。周りをどんどん掘っていくと、ハマグリを見つけることもある。もっと掘っていたら、誰かが落としたダイヤモンドの指輪を見つけてしまうかもしれない。

 それが研究者の生涯に数度しか体験できない偉大なセレンディピティとなるかもしれない。(セレンディピティとは、「何かを探していたら、もっとすごい、偉大な別の物を見つけてしまった」ということ)大事なことは、「何かを探していたら」ということ。探していなければ、セレンディピティに出会うことはない。ほとんどのノーベル賞受賞者が言及するのがセレンディピティだが、長い期間、掘り続けているなかでも、そのちょっとした変化を書き留めてこそ、見つけることがある。

意外と、偉大な発明・発見は、今の研究の周辺の外側にあるものだ。

気づきを書き留めるだけで、好奇心度が数百倍になり、セレンディピティとの出会いは何倍、何十倍にもなるとしたら、思いを書きとめる気持ちになりませんか?そして、商社マンも、研究者も、チームワークで考えを実現実行できるのは同じだ。

考えるヒント

(1)今までに、見つけた、拾った最大のものは何か?

(2)今までの、出会いで、(奥さん、恋人の次に)一番素晴らしい出会いは誰だ。

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