考えるヒント アイデアマラソン哲学 25 その3 継続支援システム(ETS)の大学教育での応用

日本では、多くの大学で、入学した学生の中に、「何のために大学に入学したのか分からない」とか、「何のために学ぶのか分からない」という「学習目的と意欲の喪失症候群」に陥る者がでる。これに囚われると、どんなに素晴らしい授業も見えなくなってしまう。いわゆる5月病という現象だ。大学に入学することだけを考えて、何年もがんばって来たが、いざそれが実現したら、そこには自分の居所が無かったという感じである。

 最も大切な入学後4月、5月の時期にこの知的喪失感を持つと、全科目、生活全般に悪影響が出る。全科目についていけなくなったり、過度のアルバイトに邁進する者も出るだろう。

 大学生の基本は思考であり、入学直後から、思考を書きとめ、様々な課題を探すことで、日々の知的活動を開始して、毎日に小さくても充実した毎日を送れるようにとのコンセプトがアイデアマラソンだ。 

岡山市の就実大学の経営学部では、過去5年間、毎年の新入生全員約100名が4か月間のアイデアマラソンを実行してきた。講義の担当は三枝省三教授だ。6年前に私がアイデアマラソンの原理を三枝教授本人に説明したら、彼は即アイデアマラソンを開始した。

 三枝教授に説明したのは、アイデアマラソンの目的は、学生たちに知的基盤を作るのに役にたつ。考えて書きとめることから、学びたいと思う気持ちを醸成し、好奇心が増す。毎日考えることで、継続力を経験し、発想の自信を持たせることができる。

 ただ、アイデアマラソンを説明して、「さあ、やってごらん」とまかせっきりにして、一切放置すると、大部分の学生たちは、停止の状態に陥る。慣れていない状態から当然の結果である。

そこで大事なのは、アイデアマラソンを開始した後の継続支援システム(ETS)だった。

 この講座ではアイデアマラソン研究所が協力して、講座担当の教授は「内なる先生」であり在岡山、アイデアマラソン研究所は「外なる先生」として在東京で対応していくことになった。学部全体で100名ほどの学生がこの講座に参加しているが、7名ほどづつのグループに分けられる。思考発想法入門の講義の初回か2回目に、全員にアイデアマラソンのノートを配布して、アイデアマラソンの原理と進め方を説明する。

 開始した後、1週間後のその講義の時間に、グループリーダーが全員からそれぞれの発想数を報告受ける。それを担当教授に報告する。

 教授は、全員の数字を、分析用のエクセルとグラフで表示して、アイデアマラソン研究所に送付する。その後も毎週、その講義の時に発想数だけの報告を集める。

 そのデータには、発想をどんどん書いている学生たち、まあまあの発想数の学生たち、最低限ギリギリの発想数、ちょっと少なめ、そして中断しているなどのありとあらゆる種類のデータが見られる。それらに「内なる先生」も、「外なる先生」も、懸命に激励と説得を開始するのだ。

 がんがん出している学生には、更に煽り、中断している学生はじっくりと、内と外が説得していく。これは大変な作業になることもある。しかし、こうした継続支援の生の声は、学生たちが反応してくるのが分かって素晴らしい。このやり取りは、アクティブ・ティーチング&ラーニングの交互作用であり、教える側と教わる側のコミュニケーションとふれあいになる。アイデアマラソン研究所は、学生たちに定期的に考えるヒントとアイデアマラソンの考え方も送る。

 極端に忙しい「内なる先生」も、学生たちの生き生きとした反応が見えると、その労力に報われる思いがする。「内なる先生」は、学生たちに接近し、地の利があることから、直接語り掛けたり、説得や激励、誉めることに注力する。遅れている数名を「内なる先生」が研究室に集めて、アイデアマラソン研究所とオンラインでの特別指導を行ったこともある。これは、カリキュラムにもシラバスにも入っていない特別の接近プログラムである。

 特にデータ上で少しでも学生の努力や積極性が見られたら、絶対にその点を指摘して、ピンポイントで誉める。内なる先生が誉めたら、外なる先生も協調して反応していく。このような相互のやり取りは、他の大学ではほとんど見られないものだ。「内なる先生」と「外なる先生」によって「ステレオ教育効果」と名付けた。

 アイデアマラソン開始から、3週間から5週間で、その講座に参加している全学生が思考にノートをフルに活用し始める。授業での集中力も加わって、姿勢が向上し、目の色が変わってくる。

1 大学生のアイデアマラソンの知的効果(仮説)

  • 複数の先生たちから、個別の継続支援システム(ETS)を受けて、大学に入学した後、血の通った講義と運営に学生たちが感動する。私が1966年から2年間オーストラリアのシドニーのマコーリー大学に留学したが、その時の経済原論は6名ほどの先生が次々に登壇して教えていた。素晴らしい授業だった。その授業のおかげで私の現在がある。
  • 考えて書くことで、考えたことを可視化できることを知る
  • 見る、聞くなど五感で考えて、書き留める習慣が付く
  • 毎日何かを考えて書きとめることから、どんな課題で考えるかを考えることは「メタ思考的」である
  • 思考の集中、継続、そして自分なりの問題や課題の解決方法を書き留め始める。
  • 自分の思考の記録数が右肩上がりに増加する。減ることはない。
  • 自分の知的日記を続けていると感じるようになる
  • 継続力と集中力が向上している

2 学生間人間関係効果

(1)グループ内での支えあいの効果もあった。グループ内で発想数が遅れている人をグループの他の人が温かく指導して、発想数を持ち上げていたことがうかがわれる

(2)発想の数は、必ずしも勉強ができる、できないとは関係なく、それまで本人も知らない発想の力を初めて発揮するチャンスを得たことで、すごい自信ができた。すごく調子にのって、思考に思考を重ねて書く人が、毎年何人か出てきている。今まで目立たなかった人が素晴らしい発想力を見せて、一躍脚光を浴びることがある。

(3)学友との付き合いから、大学生としての自覚が育つ

3.先生と学生の関係

  • 複数の先生による激励、説得は、「ステレオ効果」を示す。
  • 学生たちと「内なる先生」「外なる先生」の間に絆と信頼関係が生まれる
  • 内外の先生が、学生全員の知的基盤を固めようと必死になっていることを理解する

(4)「内なる先生」は、アイデアマラソンで送れ始めている学生たちと一緒に特別のコーチングを行ったり、「外なる先生」もスカイプで「内なる先生」の研究室との間で、学生たちに特別指導を行う。

(5)普通は、“できる”学生が「内なる先生」と話をするが、遅れている学生が話す機会が増えて、発想が挽回される。

(6)内外の先生は、学生たちが発想の自信を持つように全力をあげる。

4.情報通信の先端を使用

  • ネットは素晴らしい説得方法である。
  • 励ますのは距離ではない、タイミングだ。
  • ネットはリアルタイムで学生たちの懐にとどく

5.「思考発想法入門」で学んだ思考法と学ぶ姿勢

  • 同じような思考探索の姿勢が他の講義でも現れ、授業での学ぶ姿勢が向上する
  • 授業中のノート書き留めが良くなる。

 この講義で発想を書きとめて自信をもった学生は毎年数多く出ている。

ここでは細かい説明は省くが、これほどの効果がでるとは、驚いている。この継続支援システムは色々な応用が考えられる。もっと広く活用される時がくるだろう。

考えるヒント このような教育法への意見を書こう。質問を考えよう。そしてそれをこのブログのコメントに入れよう。

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