私が一番悲しく思うのは、日本国内で毎年起こっている洪水で、多くの住宅や建物を水没させ、かけがえのない命を失っていることです。それも、洪水の場合、全国でハザードマップが作成され、ほとんどの洪水が、ハザードマップで危険とされている地域で起こっており、毎年何回も繰り返されていることです。どうして、根本的な対策を取ろうとしないのか本当に理解に苦しみます。ハザードマップを作製した多くの方々は本当に無念でならないでしょう。
30メートルもの高さの巨大津波では、大変な防災設備を考える必要がありますが、洪水の場合、高床式や地盤高や、建築を最大10メートルほどの低層階上建築(人工地盤式)にすれば、たとえ洪水が押し寄せても、現代技術をもってすれば防ぐことが可能ではないでしょうか?
私の家族は海外生活20年を過ごしてきました。アフリカ・ナイジェリア、サウジアラビア・リヤド、ベトナム・ハノイなど、ほとんど大地震の起こらない地域に生活していましたが、最後に4年半生活したネパールの首都カトマンドゥでは、60年に一度の大地震が起こり、実際に私たちの滞在中に何度かの地震があり、その都度、住宅の建築基準では日本と異なるから肝を冷やしたことがあります。
地震後、私の住んでいた家でも天井にひび割れがあり、今度大きな地震が起こったら、死ぬかもしれないと思いながら寝ていました。帰国後には、ネパールで大きな地震が発生して、多数の人命が失われました。
多くのネパール人たちが日本を訪問した経験があり、いつも日本の建築技術や基準は、素晴らしい耐震対策を取っていると言っていました。私も誇りに思っていたのです。
地震対策は世界に誇れるようになっているのに、洪水対策がこのように不十分なのはとんでもないことです。
「かってない豪雨だったから」とか、「一度、こんなことがあったら、二度は」と思っているならばとんでもない間違いです。地球規模の異常気象からの多雨豪雨と洪水であるから、これからも毎年発生してもおかしくありません。
その時、1冊の本に出会いました。「階上都市―津波被災地域を救う街づくり」阿部寧著 三和書房です。私は著者の阿部さんに何度かお会いしました。この本は、東日本大震災の後で書かれたものですが、洪水対策は、この階上都市のコンセプトに含まれています。
アマゾンの村々の雨季、東南アジアの雨季など、すべて高床式で普通の生活をしています。日本でハザードマップの指示に適合した建築設計を考える時に来ていると思います。今年に入ってもすでに何度か洪水に襲われている地域は、根本的にその場所に住むか、高く安全なところに移るかしか、方法がありません。その場に留まり住む意思ならば、洪水にビクともしない建物で復旧させようではありませんか。
もちろん土砂崩れのハザードは別問題ですが、洪水の危険を防げることは、きわめて重要な洪水対策になると思います。高床式を「叩きこみ」という言葉で表現していますが、強い力士の象徴です。他の問題もいろいろあります。車をいかに守るか、その駐車場の高さも考えなければなりません。
叩きこみ洪水対策は、いつか必ず実現されると思います。阿部さんは、いつでも技術的なアドバイスをできるとのことで、第一号の建築をどこで実現できるかが問われています。
私は洪水対策に加えて、大津波対策の階上都市も支持しています。ご意見をお願いします。